活用事例

総合・探究 総合的な探究の時間

独自プログラム「探究の扉」で
文系・理系テーマを探究し、
大学で学びたいことを理解する

東海大学付属大阪仰星高等学校

私立・共学/学年:高1/JKS導入:2025年/利用端末:iPad

東海大学付属大阪仰星高等学校の授業風景
授業内容

「探究の扉」から、答えがすぐに出ない「問い」を見つける

担当:坂尻龍之介先生

主な活用コンテンツ:新書・文庫

「真の文武両道─学業と『何か自分が打ち込めるもの』―」の両立を目指す、東海大学付属大阪仰星高等学校。探究学習のはじめの一歩で、キャリア教育にもつながる高校1年生向けのプログラム「探究の扉」の考案者のひとりである坂尻龍之介先生に、学習の目的やプロセス、そしてジャパンナレッジSchool(以下、JKS)の活用についてうかがいました。

なぜ「探究の扉」は生まれたのか?

坂尻先生:当校は学業以外にもラグビー、サッカーなどの部活動が盛んで、「真の文武両道」を重んじています。部活動で活躍できる生徒もいれば、勉強ができる生徒もいる。でも、どちらも高い水準の生徒は限られています。以前から、評価軸は多様でありたいと思ってきました。文武以外にも自分の「好き」を極め、社会に出て活躍するケースは山ほどあります。文武以外にも自分の「好き」を追究する方法だとか、好きを深掘りする方法を理解して、多面的に思考できる。そんな生徒たちを学校で育てていきたいのです。

探究科を受け持つことになって、多様な価値観で一生懸命何かに打ち込める環境を生徒たちに提供できるのではないかと思いました。「探究の扉」はそんな思いから生まれたプログラムです。

坂尻先生たちが考えた「探究の扉」は、高校1年生を対象とした「総合的な探究の時間」のプログラム。生徒たちは、前期は文系テーマ、中期は理系テーマで「探究の扉」に取り組む。それらを踏まえ、後期では生徒自身が個人テーマを設定する。2年生になるとその個人テーマをもとにした「ゼミ」に分かれて1年間の探究活動に取り組む。ゼミ内発表で選ばれた生徒やグループが講堂での探究発表会に登壇する。

坂尻先生:前期と中期は、設定された学問テーマの枠の中で、「探究の扉」に取り組みます。自分はどんな人間だろうと考える、「自己理解」の材料づくりをします。学問テーマには、前期は文系からの5分野、中期は理系からの5分野があります。文系が苦手な生徒、あるいは理系が苦手な生徒でも、いずれかを選びやすいと思って選出しました。

2025年度前期の学問テーマは、心理・社会・教育・芸術・語学の5つの分野を設定しました。
2024年度は経済学の代わりに心理学が入っていたのですが、心理学をテーマに選ぶ生徒が多すぎました。2026年度はうまく分散できたと思いました。

画像1画像1:「総合的な探究の時間」の1時間目はJKSのログインや使い方についてのレクチャー。デジタルネイティブの生徒たちはすぐに使いこなせるとか。
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画像2・3:「探究の扉」の実際のプリント。表面を開くと、生徒たちが調べた情報を記録するためのスペースが設けられている。

坂尻先生:以前は学問分野のガイダンスを進路指導で実施していました。しかし、高校1年生に「大学の社会学部ではこんなことを学ぶんだよ」と伝えても、あまり興味をもってくれません。そこで、「探究の扉」で学問に触れると、学問が自分事になるんです。「社会学をテーマにしたらおもしろかったな。大学で勉強しようかな」といった気持ちにつながります。

また、2025年度は「探究の扉」を二段構えにしました。第一段階として、まず、自分のテーマに入る前に、教師が設定した「学問テーマ」と「問い」のワークシートに取り組んでもらいました。「学問テーマ」は、みんなが興味のある「心理学」、「問い」には「教室の心理的安全性を担保するにはどうしたらいいか」という身近なものを立て、生徒が考えた仮説を1時間かけて検証し、一連の思考プロセスを体験してもらいました。いわば、実践に入る前の準備体操ですね。

「探究の扉」、個人とグループのプロセス

「探究の扉」の流れ

[個人]

  1. 5つの「学問テーマ」から選んだ学問に関する調べ学習を、JKSで行う。
    画像4画像4:「探究の扉」のサンプルで選んだ学問テーマは「心理学」。参考にした文献はJKSの新書・文庫より、『10代と考える「スマホ」』(竹内和雄著、岩波ジュニアスタートブックス)。
  2. 調べていくなかで疑問に思ったことを挙げて調べる。
    疑問の中から、自分が熱中して探究できるものを選ぶ。
    ※(1)と(2)を複数回行うことが理想。
  3. 調べた結果、いちばん取り組みたい「テーマ」を考える。
    画像5画像5:(1)(2)(3)の書き込み例。「学問テーマ」から「テーマに関する調べ学習」を行い、「テーマ」を決めていく。
  4. 選んだテーマから「問い」を立てる。
  5. 立てた「問い」に関する調べ学習をし、問いが不十分であれば問いを立て直す。
    画像6画像6:(4)(5)の書き込み例。「問いに関する調べ学習」を行っている。

[グループ]

  1. 「問い」をグループで共有し、どの問いに取り組むかを決める。
    画像7画像7:(6)の書き込み例。個人の「問い」と「テーマ」からグループで話し合った「決定した問い」を書き込む。

坂尻先生:「探究の扉」では、「問い」を作るところまでは個人で取り組みます。JKSで関連する新書を読んだり調べたりして、選んだ学問に対する見識を深め、「テーマ」を設定するまでが2時間ぐらい。その後に「問い」を立てて、その「問い」が検証できるかを確認して、ブラッシュアップしていくワークが2時間ぐらい。そして同じようなテーマの生徒たちをグループにして議論させ、グループで進める「決定した問い」を決めます。

最初からグループで取り組むと、声の大きい生徒や、やる気のある生徒に左右されてしまうんです。ほかの生徒たちは面倒くさくなって自分のテーマをあきらめ、もうそのテーマでいいか、となってしまう。最初に個人で取り組むことで、自分の好きなもの、嫌いなもの、自分が大切だと思っているものに向き合える。ですから、まずは自己理解の場を設けます。これがキャリア教育にもつながっていきます。

グループで決めた「決定した問い」のブラッシュアップは、個人とグループの往還で取り組みます。アクティブラーニングの「シンク・ペア・シェア(Think-Pair-Share)」に似た手法ですね。まずは個人で「深く」思考して、グループで共有して「広め」、また個人に戻って「深く」する。ただ広くするだけ、ただ深くするだけではダメ。「広く」「深く」と思考を往還できるように「個人で考える」「グループで考える」を繰り返し行うイメージです。

グループで発表する「決定した問い」を決めるときは、きちんと議論させました。その結果、出てきた「決定した問い」は最大公約数なものでもいいし、いちばん面白そうに思える特異な「問い」を追究してもいい。決めた理由が「よくわからんけど、これでいい」という生徒には、その「決定した問い」に決めた明確な理由が必要だと伝えました。全員の「問い」をつなげたグループもありましたね。さすがに答えが出ない可能性があるので変えてもらいました。

画像8画像8:グループに分かれてワーク。最終的な「決定した問い」を決めるために、調べ学習をしながら、「問い」をブラッシュアップさせる。

多面的に考えることで、対話が生まれる

坂尻先生:クラスでグループごとに発表して、前期の「総合的な探究の時間」は終わります。発表は1グループ5分ぐらいです。

2025年度は生成AIのおかげで発表ががらりと変わりました。生成AIは集めた資料をスライドにまとめてくれるばかりか、読み上げる原稿までも作ってくれる。生成AIの技術向上が日々加速してるんだなと、改めて思い知らされました。

よかったのは、発表後の質疑応答が大事だと再確認できたことです。質疑応答がしっかりできているのは、自分たちで広く深く思考したものを生成AIにきちんと伝えられたということだからです。

「探究の扉」に書き込んだものをスマホで撮って、それをスライドにしているグループもいましたね。手書きのテキストもチャットGPTはスライドにしてくれる。自分が知り得た情報だけで資料が作れるし、JKSで調べたことは出典がしっかりしている。「探究の扉」のワークシートもスライドで使えるのだなと、生徒たちに気づかされました。

画像9画像9:グループ発表風景。クラスによっても座り方はバラバラ。普通に座っていたり、円になっていたり……。クラス担任の色が出るので面白いと坂尻先生は言う。

印象に残った「決定した問い」は、「プリクラはなぜ流行り続けるのか?」。加工技術も優れているスマホのアプリがあるのに、なぜプリクラという媒体は流行り続けるのかを、経済学の観点から考えました。また、芸術学の観点から「なぜ現代アートはわかりにくいのに高額なのか」を、社会学の観点から「合理的なAI社長と人情味のある人間の社長、どちらがいいか?」について取り組んだグループも印象的でした。

「決定した問い」を決めるグループでの議論は、少しだけうまくいったように感じました。議論というのは往々にして自分の意見を通すことが目的化してしまい、意見をよりよくするという視点が抜け落ちます。これは大人の会議でもよくあることです。「総合的な探究の時間」で多面的に思考する素地が身につけば、AとBの2つの案が出たときに、両方を俯瞰し分析したうえで、結論を導けるようになるはずです。ありがちなのが「確証バイアス」。仮説をAと決めた瞬間、Aを支持するデータばかり集めてしまう。大事なのは、Aの反証にもきちんと目を通し、どちらがより妥当かを検証することです。さらに言えば、AとBを読み比べたうえで、「私はCだと思う」と新しい意見を提唱してもいい。生徒たちには、「1つの側面の情報だけで終わらないように」と、何度も伝えました。多面的に考えることを重視した結果として、対話が生まれる風土につながればと思っています。

教科学習は解が1つで、正しい解にたどり着くプロセスを考えるという学習が多くあります。でも、「総合的な探究の時間」は1つではなく、いろんな道があるんです。私は、探究の時間は「自己理解」と「多面的」がキーワードだと思っています。

ジャパンナレッジSchoolの役割

坂尻先生:JKSは2025年から導入しました。同じ書籍に生徒たちが同時にアクセスできるのが魅力ですね。図書館の書籍だと1冊しかないから、どうしても早い者勝ちになってしまっていたんです。

また、グループ編成もしやすくなりました。JKSという生徒共通のプラットフォームがあるので、テーマの近い生徒たちが自然に集まりやすくなり、グループ探究の土台づくりに役立っています。

画像10画像10:探究の時間に読まれるのは圧倒的に新書。「小学館版学習まんが 少年少女・日本の歴史」や「小学館版学習まんが 世界の歴史」も人気。授業に入る前でも生徒たちは興味深く読んでいる。

国際バカロレアには「エクステンディッド・エッセイ」という科目があります。本を読んだうえでテーマを設定し、エッセイを書くという内容です。ある程度、前提条件となる基礎知識がないと、課題設定ができません。私も探究科を担当するときに、まずそのことを意識しました。信頼できる知識が集約されているJKSなら、こんな学問があるんだとか、こんな知識があるんだとか、生徒たちがワンクリックで知ることができます。それだけでもJKSの導入は成功です。

文/国松 薫(2026-11-06)
※画像や資料(坂尻先生提供)
画像11画像11:探究科主任で、国語科教諭の坂尻龍之介先生。全国高等学校ラグビーフットボール大会21回出場、優勝6回を誇るラグビー部の顧問もつとめる。

東海大学付属大阪仰星高校のご紹介

1983年に設立された中高一貫、男女共学の私立高校。同校の校名は、東海大学の建学の精神として創立者・松前重義が掲げた4つの言葉の1つ、「汝の希望を星につなげ」に由来し、「星を仰ぐ」から「仰星」と名付けられた。難関国公立大学や東海大学医学部をめざす英数特進コースと、東海大学および国公立大学、私立大学への進学をめざす総合進学コースの2コースがある。サッカー、ラグビー、野球と、部活動がさかん。

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