導入事例
JKSで生徒の学びが
大いに広がった
東京都立南多摩中等教育学校
(東京都八王子市)
東京都八王子市にある南多摩中等教育学校は、10校ある都立の中高一貫校の一つ。「心を拓く 知を極める 体を育む~心・知・体の調和~」を目標に、フィールドワーク活動(探究学習)を柱にした多様な教育を行なっている。
ジャパンナレッジSchoolの利用で生徒はどう変化したのか? オンラインデータベースの意義とは何か? 8月26日に行なわれた「ジャパンナレッジSchool Forum2022」で学校図書館司書の杉山和芳先生の講演をもとに、その趣旨を以下にまとめた。
図書館がオンラインデータベースの導入を推進
東京都立南多摩中等教育学校司書の杉山和芳です。本校は2010年に開校した都立の中高一貫校です。私は1997年に学校司書となり、本校では5年目になります。本校の授業は独自のカリキュラムを設定しており、文理融合型、探究型の科目があることが大きな特色です。学力、突破力、探究力をそれぞれ高め、最終的に人間力を育てていくことが本校の目標となっています。学校図書館は探究活動を支える役目を担っています。探究学習の核となるフィールドワーク活動をはじめ、教科の授業でも図書館が利用され、図書館は学習センターとして活発に利用されています。
図書館では、探究学習に取り組む生徒から、「〇〇について調べるにはどの資料がいいでしょうか?」といった質問を受けることがあります。以前は「まずは百科事典を引いてごらん」と指導をしてきましたが、図書館の百科事典は人数分そろっていないので、多くの生徒が同時に利用することができません。また紙の百科事典や辞書は頻繁に改訂されるわけではないため、最新の情報を得ることが難しい面もあります。
今では一人ひとりが端末を持っているので、インターネットであらかじめ調べてくる生徒も多くなりました。ただしインターネットの情報には、間違いや不確かなものが含まれています。それに対して、オンラインデータベースには間違いのない情報、専門的な知識が収録されています。その点でもオンラインデータベースに一日の長があると考え、私が中心となってオンラインデータベースの導入を推進しました。現在本校では、ジャパンナレッジSchool (以下、JKS)など3つのオンラインデータベースを利用しています。
EdTech導入補助金でJKSのトライアルを利用
2018年8月、本校は東京都のBYOD(Bring Your Own Device)研究指定校になりました。校内に無線LANが配備され、オンラインデータベースを利用する環境が整ったため、2019年にジャパンナレッジLib中高パック(以下、中高パック)を導入しました。費用は学校図書館の予算(公費)でまかないました。2021年度末で中高パックのサービスは終了したため、2022年度からJKSに移行しました。しかしJKSの利用料は保護者負担となることが難点でした。そのとき助けとなったのが、経済産業省の「EdTech導入補助金2021」です。補助金を申請したことでJKSのトライアルが利用でき、2021年9月から2022年3月までJKSとLibを併用することができました。
トライアル利用時には、図書館からJKSに関して情報提供を行ない、教職員に使ってもらえるようサポートやアドバイスをしました。トライアル期間の利用実績などをデータ化して共有することで理解を深めてもらい、2022年4月にJKSを正式導入することができました。導入後も生徒や職員向けにパンフレットを配布したり、活用のヒントを情報共有アプリや図書館だよりで発信したりして、JKSをできるだけ有効に使ってもらえるよう、図書館が後押ししています。
JKS導入による一番の大きな変化は、生徒の学びが学校のみに制限されなくなったことです。中高パックはIPアドレス認証なので学校の中だけしか使えなかったのですが、JKSは1人1アカウントを持ち、同時に3台のデバイスで利用できます。帰宅後や移動中も使えるため、生徒たちの学びの自由度が非常に高くなったと感じています。
JKSで授業も変わった
現在、各教科の授業、探究学習、進路指導、読書指導でJKSを利用しています。特に授業ではさまざまな変化がありました。たとえば、理科の教員は、「レポートを書かせると、これまではインターネットで検索した不確かな情報を参考資料に挙げる生徒が多かったのですが、最近は出典にJKSと書く生徒が増えました。レポートの質も向上したと実感しています」と言っていました。
また中1の国語の授業では、「マイテーマを探そう」という内容で新書を読ませました。生徒の振り返りには「目的を持って読むことで考え方の違いを調べたり、テーマにどう関わっているのか理解したりできる」「思ったよりたくさん新書があって、JKSはすごいと思いました」といった感想が見られました。特に電子書籍には探究学習に役立つ資料がそろっています。選定には学校司書が関わっているので、実践的で的を射たタイトルばかりです。数が多すぎず、読みたい本を検索で見つけやすいのもとてもいいと思います。
オンラインデータベースは、学校全体で活用していくことが重要です。文部科学省も、新しい学びを実現する学校施設の姿として、学校図書館とコンピューター教室とが組み合わされた、読書や学習を推進する情報センターとしてのラーニングコモンズの役割を持つことが理想的だと報告しています。その学びにはきちんとした情報源が必要です。その点でもJKSが有効だと考えます。本校でも、確かな情報源を調査・研究で活用できる、データの加工が容易で、同時に複数の生徒が利用できる、情報が更新されるといった多くのメリットがあるJKSをさらに活用していきたいと考えています。
東京都立南多摩中等教育学校のご紹介
2010年に開校した都立の中高一貫校。前身は明治41(1908)年創立の東京府立第四高等女学校。1学年は4学級(160名)、6学年で24学級ある。文部科学省による「WWL(ワールド・ワイド・ラーニング)コンソーシアム構築支援事業」の拠点校の1つで、世界で活躍できるイノベーティブなグローバル人材を育成することを目標としている。ICTを活用した「Society5.0に向けた学習方法研究校」にも指定されている。