導入事例
確かな知識源にアクセス
できるのがJKSの強み
滝中学校・滝高等学校
(愛知県江南市)
滝中学校・滝高等学校は大正15年(1926)に設立された中高一貫校。「質実剛健」「勤勉力行」「報恩感謝」を建学の精神とし、「知力」「体力」「教養」のバランスのとれた生徒の育成を志している。
ジャパンナレッジSchoolは2021年度から順次導入され、23年度には全校での導入が実現。導入に尽力された安藤裕司先生に、生徒たちの反応や授業での活用法などについてお話をうかがった。
設立100周年が導入のきっかけ
──読書の時間でジャパンナレッジSchool(以下、JKS)を使っていただいているとうかがいました。
安藤:毎朝10分間、朝読(朝の読書)の時間があるのですが、2022年度からJKSの電子書籍も使えるようになりました。知識や視野を広げたり、自分の進路を考えるためにJKSの新書類は適しているのではないか、と。
──安藤先生は、すでにジャパンナレッジをご存じでしたか?
安藤:はい。大学時代にジャパンナレッジを知りました。特に大学院生のとき、個人で契約するほどお世話になっていました。当時の担当教授から使い方をくわしく教わりました。
──JKS導入の経緯についてお聞かせください。
安藤:本校は2026年に創立100周年を迎えます。私はその記念事業に向けた委員に加わったんですが、その一つが図書館のリニューアルでした。理事長から、図書館をアメリカのように電子図書館にできないかと提案があったんです。でも、日本の書籍がすべて電子化されているわけではないので、なかなか難しいとの結論になりました。
方向転換をして、「図書館」を使ってもらうというより、いつでもどこでも「図書館機能」を使ってもらおうという考え方にシフトしました。そこでジャパンナレッジLibの中高特別パックを契約しようとしたんですが、すでに中高特別パックが利用できなくなる時期でした。そのときはショックで……。のちに中高向けのサービスがリリースされると聞いて、もうこれを使わない手はないだろうと、JKS導入に舵を切りました。
JKSは図書館の中だけに限定されず、1人1アカウントでいつでもどこでも知識源に当たることができる、まさに理想的なサービスでした。また、中高特別パックにはなかった新書や歴史マンガといった電子書籍も入っていて、1冊の本ではできないことができるようになりました。
本棚の本がすべて読み放題に感動
──導入まではスムーズでしたか?
安藤:私が所属する国語科では、中学校の集大成として中3生に卒業論文制作に取り組んでもらっています。卒論に向けて新書類が必要ではないかと、先生たちに働きかけました。みなさん、好意的に受け止めていただき、まずは中3の1学年だけに試験的にJKSを導入しました。何人かの教職員にヒアリングしたところ、比較的良い反応をいただきました。その結果、全校でJKSを導入することが決定しました。
──生徒のみなさんの反応は?
安藤:たとえば昨年度の中1生は、入学時に8~9割くらいはスマートフォンなどの何かしら端末を持っていました。ネット辞書に慣れてしまっている彼らにとって、残念ながらJKSの辞書的な価値はまだあまりピンとこない。しかし、「本棚の本がすべて読み放題になるのはすごい!」と感動していました。特に歴史マンガにはハマっていましたね。
辞書的な価値がわからないからといって、いい加減なものを提供すればいいわけではない。意識せずとも「日本国語大辞典」など、いいものに当たれる環境は作っておきたいと思いました。
──先生方への利用促進はどうされていますか?
安藤:まずは、「JKSはこんなことに使える」「生徒はこんなふうに使っている」「こういう機能がある」など、図書館からの発信に力を入れました。それと朝読でJKSが使えるようになったことも大きかったですね。辞書だけでなく、調べ学習でもこんなふうに使えるなど、自分が使っている様子を見せていけば、自然に広がっていくのかなと思っています。
2週間で20000アクセスを記録!
──実際の授業ではどのように活用されていますか?
安藤:昨年度、私は中1の国語を担当していました。普段の授業では、わからない言葉が出てきたらJKSで調べていいよと言っていました。またJKSを活用した調べ学習を1学期と2学期に1回ずつ実施しました。
1学期のテーマは「オノマトペ」。JKSの「岩波科学ライブラリー」にもオノマトペの本(『オノマトペの謎 ピカチュウからモフモフまで』窪薗晴夫 編)が1冊あったんです。
それまで私は高校で教えていたのですが、高校ではどうしても受験を意識した勉強に注力してしまう。だからこそ中学では、深く学ぶこと、広く学ぶことに力点を置く学習をすべきではないかと思っていました。だから、調べ学習を中3の卒論に向けてのステップアップと考えました。卒論は自分でテーマを決め、問題点を出してどうまとめていくかが重要です。しかし中1生ではそこまではたどりつけないので、こういう問いがあったときに、どこを見れば答えを導き出せるのか、まずはそこを出発点にしようと考えたんです。彼らには3~4つ質問を投げました。ただし、この質問に関して答えてくれる本がJKSには少なくとも1冊はあるので、まずその本を探し出せ、と。
タイトルがわかった生徒から、「オノマトペとはどういうものか」「本当にオノマトペは日本語に多いのか」などの質問の答えを本から抜き出して、それをまとめてもらいました。そこから発展して、「オノマトペがなかったら日本語はどうなっているのか」という問いかけに対して、自分の考えを書いてもらいました。この取り組みを夏休みの宿題にしました。これをもとに、何人かにプレゼン資料を作って発表もしてもらいました。
──たった1冊の本からどんどん発展させていったんですね。2学期の調べ学習のテーマは?
安藤:2学期の教材が古典分野だったので、古典で調べ学習をしようと決めました。古典文学と、それをもとにした昔話(絵本)を比べたとき、いったいどんな違いがあるのか探ってみる。「新編 日本古典文学全集」にある作品、たとえば「竹取物語」と昔話の「かぐや姫」を比べるというように、こちらでいくつかの作品をピックアップして、調べたいものをそれぞれ決めてもらいました。昔話と全集を読み比べて違った点を3つ挙げてみよう、といった内容でした。
──そして2022年11月に、アクセス数2万回を記録!
安藤:たった2週間くらいで、ですよ。学校図書館ではできなかった教育活動が、教室にいながらにしてできてしまったという、これは衝撃的な結果でした。
「浦島太郎は亀を釣っていますよ」(「室町物語草子集」より「浦島の太郎」)、「先生、雀は舌を切られてないんですけど、合ってますか?」(「宇治拾遺物語」より「雀報恩の事」)、「一寸法師は姫と結婚するためにわざと罠をかける。古文だとひどいやつですね」(「室町物語草子集」より「一寸法師」)──絵本と全集の古典作品との違いに、みんな驚いていました。
生徒たちはいろんな情報源に小さいころから触れています。たとえばYouTubeなどを見て、どんなプレゼンをしたら人は引きつけられるのか、そこで「根拠」がいかに必要なのかがわかっている。だから、しっかりとした「根拠」が重要だということは、生徒たちの意識には浸透しているんです。
JKSのアカウントを持っていさえすれば、知識の宝庫へといつでもどこでもアクセスできる。そこから自分の求める答えにたどり着ける。それは有象無象の誰かが書いたものではなくて、しっかりとした根拠がある確かなもの──それがJKSの強みかなと思っています。
滝学園 滝中学校・滝高等学校のご紹介
愛知県江南市にある男女共学の中高一貫校。明治から大正にかけて実業家として成功した滝信四郎が、「青少年を育てることが故郷への最大の恩返し」と、愛知県江南市に大正15年に設立。生徒一人ひとりに愛情をもって常に最高水準の教育を行うことを使命としている。専門家による講演や大学入試対策など、年間約550講座も実施される土曜講座、現代に必要とされる幅広い視野やコミュニケーション能力、起業家精神などを学ぶ滝学、グローバル人材の育成のための海外研修(希望者のみ)など、多様な教育活動が行われている。