活用事例

社会 歴史

「マンガを読む→要約する」
一連の作業が表現力や
歴史を見る力を育む

花園中学校

私立・共学/学年:中1(中高一貫校)/JKS導入:2022年/利用端末:タブレット

授業内容

学習まんがを読んで「源平合戦」をまとめる

担当:伏木陽介先生

主な活用コンテンツ:「小学館版学習まんが 少年少女・日本の歴史

「小学館版学習まんが 少年少女・日本の歴史」「第6巻 源平の戦い」から下記の合戦の名場面を読み、マンガを文章に整理して、字数制限の中でまとめてみましょう。

  • 1)富士川の戦い*(150字~200字)
  • 2)一の谷の合戦*(130字~180字)
  • 3)屋島の合戦(110字~160字)
  • 4)壇ノ浦の合戦(130字~180字)

マンガの情景描写を通して、歴史を自分の言葉で表現できるように

今回は「小学館版学習まんが 少年少女・日本の歴史」を使った授業。第6巻の「源平の合戦」から4つの戦いについて要約するという内容だ。

伏木先生はジャパンナレッジSchool(以下、JKS)を開き、マンガのページをプロジェクターに投影しながら、簡単に作業内容について説明。
最初に要約するのは「富士川の戦い」。先生の合図で生徒たちが作業を開始した。

生徒たちは「富士川の戦い」のページを読んで、配布された原稿用紙に要約を書く。時間はだいたい10分くらい。書きあがった人から手が挙がる。
伏木先生は生徒たちの原稿をプロジェクターに投影し、注目点を取り上げ、みんなの声を集約していく。

伏木先生:普段の授業では、ジャパンナレッジSchool(以下、JKS)は辞書的な使い方をしていて、「国史大辞典」や百科事典など使って、事柄を調べています。しかし今回は生徒たちがマンガの情景描写を通して、歴史の節目の展開や流れを自分の言葉に表現できるように、自学自習に取り組んでもらうことがねらいです。
たとえば東京大学の日本史の二次試験においては字数制限の論述問題が出ます。与えられた資料をもとに自分の文章でしっかりと表現する。そういうところに力点を置いた活動を中学生の段階から少しずつやっていきます。
授業時にも、「先生、平敦盛って誰ですか」って生徒から質問があったんですが、こちらが教えることをしなくても調べてみたくなるように、いかに動機付けさせていくかが大切です。

歴史の授業は多くの先生が教科書を読んで解説する、という印象が強い。我々が臨場感を持って伝えることももちろん大切ですが、生徒が自分で知識を掴み取って体系化させていくことも大事です。常に教えてもらうことに慣れていると、自分で整理してアウトプットできなくなりますからね。

以前から私の授業では、マンガやドキュメンタリー、テレビドラマの一部を文章にしたり、また文章にしたものを画像や映像で表現するという授業をしています。「関ヶ原の戦い」を題材に、グループに分かれて、寸劇をしてもらったこともありました。
マンガに関しては、その都度、私が一部をコピーして生徒たちに配っていたんです。それはすごい枚数になることも時にはありました。職員室のプリンターを占拠していたこともありました。その作業をやらなくて済むようになったので、仕事量が減りましたし、生徒のプリント量も軽減されました。

「源平合戦」をとっかかりに、他の巻も読んでほしい

次は源義経が戦いに加わった「一の谷の戦い」。「富士川の戦い」のときと同じように、10分くらいでマンガを読み、要約の原稿を書くという作業が続く。生徒たちは真剣そのもの。集中してマンガを読み、原稿を書き進める。

できあがったら挙手。タブレットを使って書いた作文をデジタル上で提出。先生がプロジェクターに生徒が完成させた作文を投影し、ポイントを指摘。

伏木先生:「少年少女・日本の歴史」はよろいやかぶと、民衆の服装などの描写をとっても、その時代の状況がきちんと描かれている。有職故実がきちんと取り入れられているんです。生徒たちには、まずは6巻の「源平合戦」をとっかかりに、他の巻も読んでもらえたら、と思っています。

実際にマンガからテストの作問をしたこともあります。たとえば藤原道長の国風文化とはどのコマでしょうか、といったような。マンガはそんなふうにいろいろな場面で使えるコンテンツになり得ます。非常に有り難いですね。

1つのテーマや資料を
様々な見方ができる
マンガ教材に期待

鵯越(ひよどりごえ)という難しい漢字を書く生徒に伏木先生もびっくり。ここで授業は終了。

解説の時間は全く私語がなく、生徒たちは全員が集中していた。

伏木先生:私の授業でも、板書型のものもあれば、双方向型のGoogleクラスルームなども使って、デジタルで課題を提出させることもあります。今回のように鉛筆で書くと、コピー&ペーストができないので、自分で言語化しなくてはいけない。
「源平の戦い」というテーマでも、「平氏の滅亡へのストーリー」を重く捉えていく生徒もいるし、「鎌倉幕府の成立過程としての源平の戦い」と捉える生徒もいる。生徒によって、どこに力点を置いて読むのかが違うんですね。それってまさに歴史という学問の特徴でもあると思います。一つの題材や資料で様々な見方ができるようになる。マンガもそういう大切な部分、可能性が広がっていくわかりやすい教材の一つだと思います。

(2023-4-17)

* 富士川の戦い
治承四年(一一八〇)十月二十日、富士川をはさんで平維盛を総大将とする追討軍と源頼朝の軍との間におこった戦。(JKS「国史大辞典」「富士川の戦」の項)

* 一の谷の合戦
[元暦元年(一一八四)摂津国一谷(神戸市須磨区一谷)で起った源平の合戦。(略)戦闘は二月七日に行われ、源氏の勝利に終った。この時に義経が急坂を駆け降って奇襲した「鵯越の坂落し」は天険に頼った平氏を混乱させたと伝えられる。(JKS「国史大辞典」「一谷の戦」の項)

花園中学高等学校の一貫教育主任・中学主任を務める伏木先生。著書に授業プランを集めた書籍『中学社会ラクイチ授業プラン』『中学道徳ラクイチ授業プラン』、共著に『高校文化祭の教育論』(いずれも学事出版)がある。

関連情報

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