イベント・紹介動画

【図書館総合展 2025年度フォーラム】

探究学習×図書館×ジャパンナレッジSchool
- 中学・高等学校教育の新しいかたち -

11月22日(土)に開催した図書館総合展2025年度フォーラムの動画を公開します。

このフォーラムでは、ジャパンナレッジSchoolを中学1年生から高校3年生までの全学年で利用している2校の先生にご発表していただきました。
探究活動における取り組みと教科における具体的な実践事例のご紹介です。ぜひご覧ください。

[開催日]

2025年11月22日(土)

[プログラム]

  1. ジャパンナレッジSchoolサービス紹介
  2. 学校と社会をつなぐ探究活動の実践(後藤裕市先生)
  3. ジャパンナレッジSchool活用で学校図書館がつなげる各教科の探究的な学びと❝総合的な探究の時間❞(横井麻衣子先生)
  4. 質疑応答

[登壇者]

後藤裕市先生:熊本県立宇土中学校・宇土高等学校/指導教諭(スーパーティーチャー)

横井麻衣子先生:青翔開智中学校・高等学校/学校司書

質疑応答(追加分)

時間の都合上、会場では回答のできなかった質疑応答です。

①探究テーマの掘り下げ方のアドバイスの方法、②生成AIの活用方法、③発表方法の選択と指導方法について、注意すべきことや、成功あるいは失敗の事例を教えてください。

後藤先生:
①短い探究のサイクルを回しながら、「まずさせる、やってみる」ことかなと思います。そのなかで、生徒自身に「掘り下げる際の壁」に気づかせるようにしてはどうでしょうか(教員は予見してアドバイスしたくなりますが)。
②生徒はアイディア出しやデータ処理の壁打ちに生成AIを使用していますが、探究テーマ設定の「コア」の部分は教員との対話を通して引き出されている印象があります。教員は、プロンプトのチューニングをすることで、それを探究成果物の評価にも活用できるのではないかと考えています。
③本校では、要旨、論文、ポスター、スライド等、3年間の発表機会と方法をあらかじめ設定しています。特に「原稿は捨てる」は、初期指導で重視しています。「教員が関わりすぎて代わりに発表資料を作る」ようになったら失敗ですが、生徒が準備する分には失敗への寛容さが必要だと思っています。

横井先生:
①いきなり「テーマ」は完成しないので、「キーワード出し、および整理や領域決め」→「5W1Hなど型に沿った疑問出し」→「疑問から問いへの変換」など、段階を踏んでリサーチクエスチョンの形になるようにしながら、「テーマ(問い)を育てる」という認識で掘り下げに伴走します。その過程で随時、学校図書館を活用した情報収集・整理・分析を活動として組み込み、テーマ周辺への解像度を高めていきます。
②テーマ設定の壁打ちにはあまり使っていません。宇土中高と同じく、教員や同級生との対話や、学校で作っているワークシートの活用の方がテーマを引き出してくれると思います。情報収集の段階では、先行研究の収集と整理、外部機関に協力を求める際のメール案作成、データ処理やプロトタイプ作成などにAIを使いますが、それらの検証の段階で壁打ちに活用しています。教員側では、過去の生徒の最終成果物(論文)の評価に活用できないか、試験運用中です。(まだ精度は低いですが)生徒の実態として、プロンプト・エンジニアリングのスキルや、出力結果をクリティカルに検証するスキルは発展途上段階で、中1から段階的・体系的な取り組みが必要と感じています。
③中1〜高1(グループ探究)の成果物としては、これまでポスター、スライド、提案書、ロールプレイ、ディベートを実施しました。失敗例としては、現在、中2と中3はポスターと提案書を同時に課していますが、内容の重複や漏れが発生し、グループメンバーで情報共有と整理ができていないことが挙げられます(グループメンバーの数名が提案書作成、数名がポスター作成と、作業分担していることによる情報共有不足)。高2〜高3にかけて行う個人テーマによる課題研究は、玉川学園中高さんのスタイルを参考にし、「ポスター発表→論文執筆」の順にしています。

1学年から始めた探究テーマを2学年から3学年1学期頃まで連続&継続して取り組む場合、必要なことを教えてください(テーマの広げ方、絞り込み方、他教科との連携、外部機関への繋げ方など)。

後藤先生:
最初は絞って(焦点化)、焦点化したうえで校内で拡げます(教科間)。外部機関へのつながりは、可能ならば教員がイメージしてタイミングをコントロールできるのが理想です。

横井先生:
他教科との連携は、講演内の「探究スキルラーニング」の取り組みで紹介・回答済みです。外部機関との繋げ方ですが、学年テーマに応じて教員が設定します(例:中2探究は学年テーマが「企業の課題解決」だったので、地元の商工会議所等を通して連携先・協力先を探して調整しました)。外部機関にご協力いただいた場合は成果発表会にも招待し、フィードバックを受けています。

探究学習の深化に向けての図書施設や司書のかかわりについて、何か事例があれば具体的に教えてください。

後藤先生:
探究テーマに関して自身の思考を可視化したうえで、有益な資源を求めるように仕掛ける、例えば、JKSと図書館の双方を活用するように促す、国語の授業とタイアップして新書を読み解く機会を設けることなどが有効だと思っています。

横井先生:
講演内容をもって回答に代えさせていただきます。

「新編 日本古典文学全集」をなかなか使いこなせていません。よいアイデアはないでしょうか。

横井先生:
本校の国語科では主に教科書の範囲を発展的に広げる際に使っています(例:『羅生門』の単元で原典となる『今昔物語集』や、『宇治拾遺物語』の原文・現代語訳に触れる。謡曲の『忠度』の単元で『平家物語』との関連を探るなど)。
「新編 日本古典文学全集」は原文・現代語訳・解説がついているので、解説の部分を活用しながら、古典文学作品の概要や内容を1枚のポスターで紹介する取り組みや、『源氏物語』の源氏の人生をすごろく形式でまとめる活動も行いました。現代語訳は少し記述が難しいので、学校図書館の書籍で読みやすいものを併用することもあります。

図書館を教育の中枢に据えていなかったり、あるいは冷遇している学校でも、「図書館を使わなきゃ、ヤバい!」と思わせるようなキラーフレーズがあれば教えてください。

後藤先生:
<「セレンディピティ*」--自分の想定を越えた偶然の頻度を高めていきましょう>
*セレンディピティー【serendipity】
求めずして思わぬ発見をする能力。思いがけないものの発見。運よく発見したもの。偶然の発見。(JKS「デジタル大辞泉」“セレンディピティー【serendipity】”の項)

横井先生:
刺さるフレーズは1人ひとりの立場や状況で異なるので、基本的には1on1で相手に沿ったアプローチ・対話を重ねるのがよいと思います。「図書館を使わないとヤバい」と思わせようとすると、図書館活用が目的化して、「使わないとこんなまずいことになる」という意味の脅し文句になってしまいます。「使うとこんないいことがある(生徒の学びがこう深まる、広がる)」、「先生の教材研究がはかどる、楽になる」、「1人が担当した授業が、学校全体に対するこんないい影響につながる」というような、未来につながるポジティブな言葉かけがいいのではないでしょうか。基本的には"提案"スタイルですね。図書館の利用が目的ではなく、教育課程の達成と、授業がより主体的、対話的で深い学びになることが目的なので、まずは授業や自校の教育内容の理解につとめ、「そういうねらいなら図書館だったらこれができますよ」と提案していく。そのうえで全体的な状況や実態(授業例、活用例、数字的なもの)を可視化して全体に戻していくようにしてはどうでしょう。

図書館から先生方にどのようなアプローチの仕方があるかを知りたいのですが。

後藤先生:
図書館からは、探究のスケジュールに応じて入り口に特設コーナーを準備していただいています。テーマ設定、発表方法、社会とのつながりなど、ぱっと手に取りたくなるような展示内容です。また、図書だよりの発行や、Googleクラスルームでのデジタル連絡もされています。

横井先生:
空間的アプローチとしては、探究学習に役立つ資料コーナーの設置、過去の成果物(論文)コーナーの設置、情報カードやワークシート類、共有文具棚等の設置などがあります。
対人アプローチとしては、教科会へのJKSコンテンツ案内、職員室内での新聞記事や書籍のミニ展示コーナー(給湯室がおすすめ)設置、探究に使えるデータベースやサイト等のリンク集の案内、授業事例や図書館活用の数値的実績を可視化して共有、過去の探究学習で使えた資料をブックリストにまとめて展開、などが考えられます。
また、毎週の分掌部会(探究部会)では図書館資料を活用する時期や内容について具体的に提案したり、雑談の中では他校の図書館活用事例を紹介したりすることもできます。
雑用っぽいことをも買って出たり、空間貸しをしたりするのもお勧めです(ラーニングセンターでの生徒との面談、教員や生徒同士の会議、成果発表や成果物展示などにも積極的に使ってもらう)。

探究学習で、図書館活用をどのように強化されていますか。教育系コンサルタントが提案する探究学習コンテンツは、原則、アプリやウェブ利用が主体であり、アプリやインターネットに頼らない学校図書館主体の(昔ながらの)探究活動が衰退しているようにも感じられます。むしろ、本来の探究活動を取り戻すためにも、学校図書館との連携は欠かせないと信じていますが、どのようにお考えになりますでしょうか。

後藤先生:
例えば探究活動の入り口の場面では、「図書館活用」をあえてすべきだと思います。人文、社会、自然科学を問わず、目的や興味が明確になっていない生徒なら、なおいっそう、そうすべきです。
しかしながら、探究の方向性が定まってくると、オンラインツールの有効性が高まってくる印象があります。CiNiiやJ-STAGEなどでの文献検索にはオンラインが適しています。

横井先生:
後藤先生に同じく、テーマ設定の初期段階で領域が定まっていない状態や領域に関する知識や理解が乏しい段階では、学校図書館の資料(主に紙の書籍)で体系的にまとまっているものを活用させたほうがよいと思います。研究の入口としては、新書を複数読むこともお勧めです。
「ブラウジング」や本棚の背表紙読み、目次読みを教え、セレンディピティにつなげることもよいと思います。
また、「点検読書」や「あらまし読み」、「探究的読書」、リーディング・ワークショップなど、いろいろな読みの方法があることを学校図書館が伝えていくことも必要だと思います。
テーマ設定の段階が進み、研究手法やアプローチを具体的にしていく段階では、宇土中高と同じくオープンアクセスの論文に当たらせます(高校生は研究論文を読み慣れていないので、探し方や論文の基本的な構造をガイドするなど、ここでも支援が必要ですが)。
「本来の探究活動」という認識は変える必要があると思っています。今後はオンラインツールの活用は当然のものとなるはずです。
以下の3つを併用することが、今後のスタンダードな「本来の探究活動」になっていくと考えています。
 ・図書館や博物館が蓄積してきた紙資料や現物資料。
 ・オンラインツールや生成AIやバーチャル空間上の情報。
 ・手足を使ったリアルで直接的な情報(身体性のある対人インタビューや参与観察調査)。

司書がさまざまな教科の「お助け」をするときに、入り込んでいくことの難しさを感じます(お手伝いをするにあたっては、情報を共有してもらえるとありがたいが、情報を共有するという手間を教科担当者の先生方にかけたくない。必要なときに助けてもらいたいと思ってもらえればよいが、そこまで存在をアピールできない、など...)。ご登壇のお話のなかでもこのようなテーマについて触れていただけるのではないかと思いますが、なにか先生方に司書を活用していただくコツやきっかけ作り、あるいはやってよかったというようなしくみ化の例があれば、ご教示ください。

後藤先生:
本校では「進路室来客対応」、「別室登校対応」、「図書館」の3コマを時間割に組み込んで、全職員が図書館に週1回は足を運ぶ仕組みを導入しました。頻度が上がると可能性が拡がる印象を持っています。

横井先生:
講演内容をもって回答に代えさせていただきます。
(Q6.の回答にも、その補足がありますので、ご覧ください)

図書館ガイダンスで一通り説明をする時間はいただけるのですが、ほとんど身につかないまま生徒たちが卒業を迎えてしまうのが悩みです。なにかいい手はないでしょうか。

後藤先生:
探究活動やキャリア教育は図書館と親和性が高く、多くの生徒、教員が関わるため、年間指導計画と照合して活用機会を探るのがよいという印象を持っています。

横井先生:
講演内容をもって回答に代えさせていただきます。(「総合的な学習(探究)の時間」以外に各学年・各教科の中で行う「探究スキルラーニング」というものを位置づけ、年度当初に年間計画を立てて実施しています)

青翔開智中高さんのウェブサイトの進学実績のページを見ますと、総合型選抜入試での大学進学割合が60%を超えていることや、総合選抜型入試で進学した生徒の探究学習のテーマなどが公開されています。 また、宇土中高さんの後藤先生は、教育系の媒体のウェブサイトのインタビューで、探究学習と進路指導の連携の取り組みをご説明されています。 「ジャパンナレッジSchool」あるいは探究学習は大学進学のための勉強とは関係がないので、高校3年ではあまり必要ないというお声を頂戴することがあります。しかし、これだけ年内入試で大学に進む生徒が増えている状況だと、探究学習と大学進学は無縁でなくなっていると思います。探究学習の取り組みと大学進学の関係について、どのようにお考えかをお聞かせください。

後藤先生:
キャリアデザインの視点に立って、①キャリアプラン、②キャリアパス、③キャリア形成と、3つの必要な場面、事柄からキャリアが構築されると考えた場合、②のキャリアパスからの逆算だけでは、学校教育の存在意義がなくなるという印象を持っています。学校教育で身につける力として、生きる力、社会人基礎力、学士力などが様々な省庁で提唱されていますが、認知能力だけでなく、非認知能力の育成が学校教育で必要だと感じています。

横井先生:
(後藤先生の課題に補足)キャリアパスだけで考えた場合でも、大学入試全体で総合型選抜・学校推薦型選抜の割合が大きくなっています。そういった入試形態では、いわゆる勉強(偏差値・学力)だけではなく、高校時代の探究学習の過程や成果、社会の中でどうありたいかというビジョン、非認知能力が求められます。生徒の視野を広げるためには、JKSの時事系コンテンツ(例:「月刊Newsがわかる」「現代用語の基礎知識」「日経キーワード」「文藝春秋オピニオン 論点100」等)の活用が特に有用になるのではないかと考えています。

後藤先生にお聞きしたいのですが、「ロジックリサーチ」のガイドブックの執筆には、かなりの時間や計画が必要だと思います。もちろん、年々改良しながらお作りになっているとは思いますが、そのようなガイドブックの執筆にはどれくらい時間がかかりましたか? また、その時間はどのように取られているのでしょう? 私もそのようなものを作ってはいるのですが、いかんせん時間が取れず(授業も多く、夜8時までは生徒対応があります)、思うようにまとめられないことに悩みを抱えています。

後藤先生:
ご質問ありがとうございます。探究活動を導入して5年目に第1版を作成しました。1年目~3年目は年次進行で教員、職員の目線合わせの1枚ペーパーを、毎次準備していました。しかしながら、各担当および探究テーマによって進度が異なるという課題もありました。そのため、3年間で作成した1枚ペーパーをもとに、冊子にすれば各自のペースで活用できるという発想に至りました。冊子化に約1年かけました。イメージとしては、学校にあるプリント、教材をすべて集め、一元化する流れです。課題としては、一度冊子化したものをリニューアルするのには労力を要するため、先送りになりがちな点です。

後藤先生に質問があります。このような探究活動は、現在、後藤先生が先頭に立って行われていると思いますが、公立学校では教員の異動があります。後藤先生が異動された場合も、この活動は引継ぎが可能なのでしょうか。

後藤先生:
ご質問ありがとうございます。14年在籍して説得力がないかもしれませんが、仕組み作りと、後任育成、職員研修は大事にしています。
職員研修は学校経営案として4月に計画を立てて、年間を通じて実施するようにしています。全体研修、教科会での研修、学年会での研修などがあります。探究活動の主担当もSSH研究主任(自然科学系)、GS研究主任(人文・社会科学)を配置するなど、多くの教員が主担当として運用する体制を構築しています。

横井先生にお聞きします。ICT関係が疎いので頓珍漢な質問になるかもしれませんが、ご了承ください。 日本史のChatBot(?)を使った活動は、とても興味深く拝聴させていただきました。データを落とし込む段階で、自ら学んだこと調べたことをアウトプットすることで、同時に自分の知識や記録にインプットされているということになるでしょうか?また、作成されたBotは、その後、アーカイブ的に後輩が学習に使うことができるのでしょうか。

横井先生:
JKSのコンテンツのみならず、学校図書館の準備した資料を含め、複数の情報源を使って調べさせています。そこで学んだこと調べたことをワークシート(Googleスプレッドシート上のフォーマット)に出典とともにアウトプットすることで、知識の整理につなげています。作成したChat botは当該学年の生徒がその後の授業で使っていくほか、次の学年の後輩にも使わせる予定です。

両校の探究的な活動において、他の先生方はどの程度お関わりになっているのでしょうか。お話を聞いている限りだと、主となる先生方に任せているというよりも、本当にがっつり(後藤先生や横井先生だけでなく、各校の他の先生も)お関わりになっている印象を受けますが。

後藤先生:
生徒の3年間を通した探究活動は全校体制で運用できるようにしています。自然科学系は理数教員、人文・社会科学系は学年所属教員と地歴公民教員が指導します。評価(ルーブリック、チェックリスト)と教材(ガイドブック)を用いて職員間の目線合わせも行っています。
(Q12.の回答にも、補足がありますので、ご覧ください)

横井先生:
全校体制をとっています。校務分掌上に「探究部」があり、「総合的な学習(探究)の時間」のカリキュラム開発と、中1〜高1の授業実施を探究部の教員が行っています。高2・高3の探究(個別テーマによる課題研究)は、全教員が関わります。1人の教員につき、2~3人の高2生、2~3人の高3生を担当します。基本的には、高2で担当した生徒の進路実現まで伴走します。また、教員側は2~3人の教員で1チームの小規模チームも組んでおり、定期的に情報共有会を行い、探究で行き詰まっている高2生の支援を検討しています。
探究の成果発表会は年1回、年度末に全校で実施しています(各学年の中間発表のタイミングは都合のつく教員のみが参加)。
各教科における探究学習(探究スキルラーニング)は、全教員が実施しています。取り組み状況を学期末に可視化して、職員会議で共有して目線合わせも行っています。

生成AIをリサーチに使う場合、それを参考文献として許可していますか?

後藤先生:
参考文献の記載方法を生徒にレクチャーする際に、引用元を確実に記載するよう指導しています。

横井先生:
情報収集における生成AIの利用は許可しています。そのうえで、生成AIは再現性が難しく、責任表示がなければ「参考文献」にはならないことを指導し、生徒にはAIが出力した情報の出典まで辿らせ、元の情報源を参考文献欄に記載させています。情報収集以外の過程(データ分析や試作等)で利用している場合は、生成AIの種類やバージョンの記載をさせます。画像生成をした場合は、クレジット表記やAIを利用した旨を画像に埋め込んで表記させ、透明性を確保しています。(生成AIの進化がめざましいため、現在の対応は暫定的で、今後変更していく可能性があります)

後藤先生と横井先生にお聞きしたいことがあります。先ほど生成AIのお話が出てきましたが、私は大学のレポートで自分が書いた文章をAIに添削してもらいながら文章の構成を整えるという形で活用しています。将来教員になる身として、このような使い方は生徒に勧めてもよいものなのでしょうか。

後藤先生:
九州工業大学のユニークなレポートがあって、生成AIが作成した志望理由と高校生が作成した志望理由をブラインドで採点委員が評価した場合、有意に高校生が作成した志望理由の方が評価が高かったという報告がなされています。生成AIの特性や特徴を理解したうえで、有効に活用する方法を学んでいくのがよいと考えています。
筑波大学の落合陽一氏が実践されている、デジタルヒューマンを用いた高校生によるディベート大会の様子を動画で視聴すると、考えさせられる点が多いと思います。
https://www.youtube.com/watch?v=BZfdlYcsMFk 新しいウィンドウで開く

横井先生:
生成AIはあくまでも人間中心*の技術ということを考えれば、たとえ拙くても初発の構成案出しや初稿の文章をまず自分で書いてみるという過程を、個人的には重視しています(画像生成をさせる際も、初めに手描きで描かせます)。そのうえで推敲などのブラッシュアップ段階で生成AIに壁打ち相手になってもらうことは、有用と考えています。
また、レポートの内容にもよりますが、生成AI自体は「身体性」や「主観的経験」、「主体性」、「倫理的判断」や「自己の物語性(ナラティブな語り)」などを持ちえません。人間にしかできないものがどれくらい盛り込まれるかで、レポートの内容や質が変わってくるのではないかと考えています。
*人間中心(Human-Centered AI: HCAI):人間の能力を代替させるのではなく、人間の能力(創造性や自律性など)を増幅し、高めるようなAIシステムを作るという考え方。