イベントレポート

ICT活用セミナー「生徒の学びの質を上げる!ジャパンナレッジSchoolを活用した実践事例」

写真:JKSイベント「生徒の学びの質を上げる!ジャパンナレッジSchoolを活用した実践事例」の様子

イベント情報

開催日
2025年11月8日
場所
紀伊國屋書店 新潟店
登壇者
新潟県立三条高等学校の押木和子先生、新潟県立新津高等学校の小林真也先生
プログラム
  1. 三条高校でのジャパンナレッジSchoolの取り組み(押木和子先生)
  2. ジャパンナレッジSchoolを活用した実践事例──資料読解を中心とした探究学習に活かすための読書の活用について(小林真也先生)
  3. 質疑応答

2025年11月8日、紀伊國屋書店新潟店で「生徒の学びの質を上げる!ジャパンナレッジSchoolを活用した実践事例」が開催されました。新潟県立三条高等学校の押木和子先生と新潟県立新津高等学校の小林真也先生に、「ジャパンナレッジSchool」を活用した教科学習や探究学習、読書活動における活用事例をご紹介いただきました。

三条高校でのジャパンナレッジSchoolの取り組み新潟県立三条高等学校 押木和子先生

画像1 画像1:「三条高校でのジャパンナレッジSchoolの取り組み」紹介の様子

生徒にJKSを活用してもらうため、全教員+全生徒対象のオンライン講習を実施

新潟県立三条高等学校は、創立120年を超える伝統校です。2021年より文部科学省WWL(ワールド・ワイド・ラーニング)コンソーシアム構築支援事業*の拠点校となり、グローバルな人材育成を目指し、探究学習や海外研修などに力を入れています。

*文部科学省WWL(ワールド・ワイド・ラーニング)コンソーシアム構築支援事業
「将来、世界で活躍できるイノベーティブなグローバル人材を育成するため、これまでのスーパーグローバルハイスクール事業の取組の実績等、グローバル人材育成に向けた教育資源を活用し、高等学校等の先進的なカリキュラムの研究開発・実践と持続可能な取組とするための体制整備をしながら、高等学校等と国内外の大学、企業、国際機関等が協働し、テーマを通じた高校生国際会議の開催等、高校生へ高度な学びを提供する仕組み(ALネットワーク)の形成を目指す取組」(WWLコンソーシアム構築支援事業の専用Webページ 新しいウィンドウで開くより)

国語科の押木和子先生は、図書館総合展にオンライン参加した司書の友人から「(ジャパンナレッジSchoolは)図書館を個人持ちするようなもの」と紹介され、「ジャパンナレッジSchool」(以下、JKS)を知りました。WWLコンソーシアム構築支援事業の拠点校になったことをきっかけに、「生徒の学びの質を上げたい」「生徒を自律した学習者にしたい」との思いから、2022年春のJKS導入に尽力されました。現在は、全校生徒がJKSを利用していますが、導入した当初は生徒たちの利用率の低さに悩んだといいます。

押木先生:こちらがいくら便利だと伝えても、生徒たちは調べる時間と習慣があまりなく、JKSをうまく活用できていませんでした。そんな状況を受け、今年、紀伊國屋書店の方に、全生徒・教員に対してJKSの使い方についてオンライン講習をしていただきました。いろいろな教材の活用方法を教えていただき、生徒たちもすぐにコツをつかんでいましたし、それを見た教員にもかなりの刺激があったようで、お願いしてよかったと感じています。

画像2 画像2:紀伊國屋書店担当者によるJKSの使い方オンライン講習の様子

探究学習で重要なのは、テーマに関する基礎知識や、最新データの確認

JKSを有効に活用するため、司書教諭でもある押木先生は、1年生の「点検読書」でJKSの新書を使用されました。

押木先生:図書館で行っている「点検読書」とは、本の「はじめに」と「おわりに」を読んで、この本はどんな内容で、自分は読む必要があるのか、興味があるのかを点検する授業です。JKSには1年生でも読みやすい新書がラインアップされているので、点検読書に大いに役立ちました。

また、探究学習では「導入」でJKSを活用されています。

押木先生:たとえば、あるグループは「ジェンダーギャップを解消するには」というテーマを選びました。しかし「ジェンダーギャップ」の定義をきちんと説明できる生徒はほとんどいませんでした。そのため、まずは「日経キーワード」と「日本大百科全書」で「ジェンダーギャップ」を調べ、2つの内容を比べてもらいました。次にジェンダー問題の基礎知識を知ってもらおうと、JKSにある『ジェンダー史10講』(姫岡とし子著 岩波新書)を薦めました。そして、実際の日本のジェンダーギャップ指数はどうなっているのかを、「最新ニュース百科」のデータで調べ、その後、『データから読む都道府県別ジェンダー・ギャップ』(岩波ブックレット、共同通信社会部ジェンダー取材班編)で都道府県別のジェンダーギャップ指数を読んでもらいました。これらを経て、生徒たちは探究学習に入っていきました。

このように、まずはJKSでテーマの定義を複数調べ、基礎的な知識を学び、新書やニュースで現状を把握してから、探究をスタートさせています。進めていくうちにわからなくなったら、また新書を読んだり、定義を調べた最初の事典に戻ったりして、基本を押さえ直します。生徒たちは行きつ戻りつしながら、探究学習に取り組んでいます。

画像3 画像3:JKSを活用した「探究学習の導入例」

豊富な資料があるJKSだからかなう、生徒の主体的な学び

押木先生は、国語の授業でJKSを活用すると、生徒がより主体的になり、教科書だけではできない学習ができると言います。

押木先生:「論理国語」の教科書に掲載されている「見えぬものを見るということ」という浅田次郎の評論に、西行、(藤原)定家、寂蓮(法師)の「三夕(さんせき)」の歌を比較し、定家の歌を「異次元の作」と評価する記述がありました。そこで、「JKSのどんなコンテンツを使ってもいいから、皆さんは三夕の歌の中でどれがいちばん優れていると思ったか、根拠を示して発表してほしい」と生徒たちに課題を出しました。

生徒たちは、寂蓮や西行の境遇や作風を調べてスライドを作成し「寂連には独特の自然の見方がある」「西行は出家した時の気持ちを歌に詠みこんでいる」と自分たちの選んだ歌人の作品の魅力を発表していました。グループでJKSを使って調べたからこそ、教科書で学んだ世界を広げることができたと思います。

画像4 画像4:JKS活用例「三夕の歌の比較」の紹介

押木先生:1年生の「言語文化」の授業で「土佐日記」を扱ったのですが、教科書には「門出」と「帰京」しか載っていません。そこで、授業では、いったいどれくらいのあいだ旅をしていたのか、調べてもらいました。「新編 日本古典文学全集」には、地図とともに旅の行程が全部書いてあります。期間は55日間だなとか、なぜ12月20日くらいに旅立ったのだろうとか、教科書では一部しかわからなかった「土佐日記」の全体像がつかめたことは、生徒にとって大変よいことだったと思います。

画像5 画像5:JKS活用例「土佐日記の旅の工程を調べる課題」の紹介

今後の課題は、生徒の習慣づくりと教科横断的なJKSの活用

これからの活動について、押木先生は次のように話してくださいました。

押木先生:いつの頃からか、辞書を引く生徒が少なくなりました。そもそも、出合った言葉の意味がわからなくても気にならないんですね。探究学習では基礎知識がなくては進まないケースが実に多く、調べ学習なくして探究は進まないと、私は思っています。
JKSも現実の図書館もネット情報もすべて駆使して、生徒たちには多様な調べ学習をしてほしい。そのために、生徒たちには主体的に調べるという習慣を身につけてほしいと思っています。我々教員側も、JKSを授業でもっと活用するだけでなく、探究学習を軸として教科横断的な活用ができないか、模索していきたいと思っています。

ジャパンナレッジSchoolを活用した実践事例──資料読解を中心とした探究学習に活かすための読書の活用について新潟県立新津高等学校 小林真也先生

画像6 画像6:「ジャパンナレッジSchoolを活用した実践事例──資料読解を中心とした探究学習に活かすための読書の活用について」紹介の様子

大学での研究活動の準備となる探究学習に備え、JKSを導入

新潟県立新津高等学校も、創立100年を超える伝統校。2024年度に文科省の「高等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール)」*に選ばれました。

*高等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール)
「情報、数学等の教育を重視するカリキュラムを実施するとともに、専門的な外部人材の活用や大学等との連携などを通じてICTを活用した探究的・文理横断的・実践的な学びを強化する学校などに対して、そのために必要な環境整備の経費を支援」する事業。(文部科学省のWebページ「令和7年度 高等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール) 新しいウィンドウで開く」より抜粋)

公民科(政治・経済)教諭の小林先生は、現在2年生の学年主任で探究学習の企画・運営に携わっていらっしゃいます。新津高校は、2024年度、探究学習を地域課題解決型から高大連携(大学での研究活動との接続)を重視した仮説検証型に転換しました。仮説検証型探究学習では、大学進学を目指す生徒たちに向けて、リサーチ・クエスチョンの立て方や仮説の設定、データの収集や分析・編集方法など、大学で行う研究の基礎的な要素に慣れてもらうためのカリキュラムが組まれています。新津高校は、そのベースを作るためにJKSを導入したとのことです。

小林先生:仮説検証型の探究学習では、文献を「読む」、「収集する」ことが中心になります。生徒たちはJ-Stageなどから集めた読み慣れない論文を読まなければならないため、普段から科学的な妥当性の高い文章に慣れさせる必要があり、JKSの新書を活用しています。また、探究学習関連の教材費を削減する意味でも、JKSが役立っています。

新書は「探究学習のガイダンス」にも「気づきを発見する練習」にも活用できる

新津高校では毎朝10分間の「朝学習」があり、月曜日と火曜日は「朝読書」をしています。小林先生は朝読書でJKSの新書を活用されています。

小林先生:1年生は11月まで、2年生は6月まで、こちらで読む本を指定し、その後は自由にしました。探究学習の教材を購入する代わりに、探究に関連する本をJKSから探して朝読書で読んでもらうことで、費用が削減できただけでなく、探究のガイダンスの時間を最小限にすることができました。また、ある程度学術性が担保されている新書を読むことで、関心のある分野の研究作法も身につくのではないかと考えました。1年生は、『なぜ私たちは理系を選んだのか』(桝太一著 岩波ジュニアスタートブックス)という読みやすい本からスタートし、探究については、『マイテーマの探し方』(片岡則夫著 ちくまQブックス)を読ませ、2年生になってからは、『未来のきみを変える読書術』(苫野一徳著 ちくまQブックス)、そして『勉強法の科学』(市川伸一著 岩波科学ライブラリー)を読ませました。

画像7 画像7:探究学習の教材として活用した4冊。

夏休み、冬休み、高校入試期間中の長期休みには、「読書レポート」を課題にされたと伺いました。

小林先生:「読書レポート」は〝感想〟ではなく〝気づき〟がテーマです。本を読んで何がわかったか、200字で端的に書いてもらいました。

『キャリア教育のウソ』(児美川孝一郎著 ちくまプリマー新書)、『植物はなぜ動かないのか』(稲垣栄洋著 ちくまプリマー新書)、『宇宙論入門』(佐藤勝彦著 岩波新書)、『アウシュヴィッツ生還者からあなたへ』(リリアナ・セグレ著/中村秀明訳 岩波ブックレット)、『パスタでたどるイタリア史』(池上俊一著 岩波ジュニア新書)、『あなたはこうしてウソをつく』(阿部修士著 岩波科学ライブラリー)……生徒たちが読んだものは多岐にわたり、実に興味深かったとのことです。丸山真男の『日本の思想』(岩波新書)を選んだ生徒もいたそうです。

小林先生:たとえば『客観性の落とし穴』(村上靖彦著 ちくまプリマー新書)を読んだ生徒は、「エビデンスが重視される世の中だが、客観的であることが必ずしも正しいとは言えないということがわかった。我々の感じる部分、人間性や豊かさといった数値化できない部分を大切にすることが重要だと思った」という内容のレポートを書きました。それぞれのレポートには「なるほど」と思うところがたくさんあって、私自身さまざまな気づきをもらいました。

JKSの導入によって、探究学習の質と生徒の読書量が向上

JKS導入後の成果について、小林先生は次のように語ってくださいました。

小林先生:朝読書をすれば1年間で6~7冊は本が読めます。総合型選抜や学校推薦型選抜の小論文対策にもなります。現状では、論文を作成するにあたり、トピックセンテンスの根拠となるサポートセンテンスを書ける生徒が少ないんです。サポートセンテンスを書く力は、探究学習や読書をすることによって養われていきます。JKSの導入で、探究学習の活動の質が向上しました。学力向上への影響については、もう少し長い目で見る必要がありますが、授業活用にはまだ課題が多くあるので、生徒へのガイダンスをもう少し充実させていければと考えています。

質疑応答

生徒・教員に最大限JKSを活用してもらう方法について、活発に行われた意見交換

押木先生、小林先生からの発表の後、質疑応答・トークセッションが行われました。

Q1生徒たちが、文章ではなくキーワードでの検索ができるかどうか不安です
A

押木先生:「探究」のテーマ決めの時間に教員が生徒と壁打ちをするようにしました。壁打ちをしながら用語がどんどん出てくるので、生徒はキーワードだと認識するようになり、その場ですぐに検索するようになりました。

小林先生:リサーチ・クエスチョンを設定する際の検索方法として、気になるキーワードに加え、「変化」、「推移」といった言葉を併せて検索するようずっと指導しているので、問題なく使えています。

Q2教科への活用にはどのような工夫をされていますか(小林先生)
A

押木先生:JKSの使い方よりも、コンテンツ内容を共有することが多いです。とにかく、「こんなものが入っていましたよ」と伝えるようにすると興味をもってもらえて、授業活用につながることが多いように思います。

Q3他の先生は授業のやり方を確立していて、JKSをなかなか使ってくれないのですが
A

小林先生:新しい学年が使ってくれたのは、DXハイスクールに採択されたことも大きかったと思います。申請書にJKSのことを記載してしまったので、使わざるを得なくなったということもありますが。また、他教科・他学年の先生とこまめにコミュニケーションを取り、JKSをプレゼンするようにしています。「JKSにすると楽だ」、というメリットを押し出せるといいのですが、まずは教科ごとに仲間をつくっていくイメージでしょうか。

押木先生:他学年に使ってもらうのは本当に難しいですが、最初は教科ごとではなく、探究学習ベースで推すのがいいと思います。私は、新しい学年主任が決まると、すぐにJKSをどう使えるか相談を持ちかけています。また、WWLに関する校内会議で、講習をいつにするか、このタイミングで新書を使うなど、JKSの使い方を事前にしっかり決めておくと、活用してくれる先生が多いと感じています。

なお、この質問に関連して、弊社担当者から「全学年で活用している学校の事例もイベントで紹介しているので、ぜひ参考にしていただきたい」という発言がありました。
【図書館総合展 2025年度フォーラム】 探究学習×図書館×ジャパンナレッジSchool - 中学・高等学校教育の新しいかたち -

Q4理科でJKSを活用している事例はあるでしょうか
A

押木先生:生物の授業で「ブルーバックス」を読んだレポートを課しています。また、今年からJKSに図鑑が追加されたので、先生が授業の資料作りに活用していると聞いています。

先生方のご発表、質疑応答のあとも、探究学習に対するさまざまな知見や、JKSの有意義な活用方法について多くの意見が交わされ、当イベントは盛況のうちに幕を閉じました。

文/国松 薫 (2026-01-27)

関連情報

三条高等学校のJKS導入の背景や取り組みの成果は、本サイトの「導入事例」でも紹介しています。
本イベントレポートと併せて、ぜひご覧ください。
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