ティム・オブライエン*著、村上春樹*訳の『待ち伏せ』*を深く読み込むために、ジャパンナレッジSchool(以下、JKS)を活用した下記3項目のワークで深掘りする。
- ワークA:「この男は今死のうとしているんだ」とはどのようなことか?
『待ち伏せ』の英語の原語文から該当部分を探してJKSの英語辞書を使って翻訳してみる。なぜこのような日本語に翻訳されているのか、翻訳者の意図を考えてみる。
- ワークB:ベトナム戦争の経緯や背景、世界各国の反応・影響は?
JKSで「ベトナム戦争」「ベトナム戦争 年表」などを検索して調べる。そこからさらに深掘りして調べる。
- ワークC:戦争のようす(兵士たちは何を体験したのか?なぜアメリカ軍は苦戦し、敗北したのか?)
「歴史総合」の教科書を参考に、教科書にある関連用語をJKSやGoogleで検索し、細部のリアルについて調べる。
何を深掘りしていくのか……まず、キーワードを見つける
筑摩書房「言語文化」の教科書に掲載されている、ベトナム戦争に従軍したティム・オブライエンの短編小説『待ち伏せ』。村上春樹が翻訳したこの作品は、ティム・オブライエンの短編集『本当の戦争の話をしよう:The things they carried,』(1990)からの一編。
この作品を深く読み込むために1時間をかけ、物語の背景についてJKSを使ってリサーチ。生徒たちは3つのワークの中から1つを選び、Google Classroomの共有ファイルに書き込んでいくという作業だ。
ワークAは4人、ワークBは約10人、ワークCにはクラスの半数以上がエントリー。
「ワークAは英語の辞書を用います。ワークBとCは歴史総合の教科書にあるベトナム戦争の記述にヒントがあるので、それを足掛かりとして書き出していってください」「近くの人に聞くのも全然ありです。だけど他人が書き込んだものは消さないように」「特定の答えにたどり着くのが目的なのではなく、まずは知ることが大事」と木村先生は声をかけながら、席を回って、生徒たちを見守る。
JKSのログインに戸惑う生徒たちもいれば、質問をする生徒もいる。先生はすかさず対応していた。
今後もジャパンナレッジSchoolで
教科横断型の授業をしていきたい
「あと5分くらいです」と木村先生。ワークCにエントリーしている生徒がいちばん多く、書き出したものがかなりの分量になっている。
そして残り1分。「今日、僕はほとんど教えていないからね」と木村先生。「今回は調べたことを書くまで。次回は感想とか発見とかを書く授業になると思います」
あっという間に1時間の調べ学習が終了。
(2023-5-1)
* ティム・オブライエン
アメリカの作家.ミネソタ州オースティン生まれ.大学卒業と同時に陸軍に入隊し [1968] ,ベトナム戦争に参加する.事実とフィクションを巧みに操りながら描き出すベトナム戦争体験《僕が戦場で死んだら▼:If I die in a combat zone, box me up and send me home, 1973》《カチアートを追跡して▼:Going after Cacciato, 1978》《本当の戦争の話をしよう▼:The things they carried, 1990》などにより,20世紀後半の戦争文学を代表する.(JKS「岩波 世界人名大辞典」「オブライエン」の項)
* 村上春樹
[1949~ ]小説家。京都の生まれ。処女小説「風の歌を聴け」でデビュー。「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」で谷崎潤一郎賞受賞。「ノルウェイの森」は空前のベストセラーとなる。他に「羊をめぐる冒険」「ねじまき鳥クロニクル」「海辺のカフカ」など。平成18年(2006)フランツ‐カフカ賞、フランク‐オコナー国際短編賞を受賞するなど、海外でも高い評価を受けている。(JKS「デジタル大辞泉」「むらかみ‐はるき【村上春樹】」の項)
花園高等学校で国語を教える木村先生。
木村先生:ワークB、ワークCの生徒は何を深掘りしていくのか、そのキーワードを見つけるところがポイントだと思います。関係なさそうな言葉だなと思ったら、別の言葉を検索してみる。とにかく、関わりのある言葉を探していく。繰り返していくうち、全体像が見えてくるんです。ぜんぜん関係なかった言葉に当たってもそれは失敗じゃないし、さっさと切り替えればいい。それぞれの作業を見ていると、その生徒がどれくらいググる(検索する)ことに慣れているかもわかりますね。