活用事例

総合・探究 総合的な探究の時間

探究活動の肝はテーマ設定。
その「種まき」の段階で
JKSの「新書・文庫」を活用する

東京都立南多摩中等教育学校

公立・共学/学年:高1、高2/JKS導入:2022年/利用端末:学校推奨端末

授業内容

フィールドワーク活動のテーマ設定で、新書を読み込む

担当:今門泰久先生

主な活用コンテンツ:「ブルーバックス」「岩波ジュニア新書」「岩波ブックレット」など

中高一貫校の南多摩中等教育学校は、FW(フィールドワーク)活動を柱にした多様な教育を行っている。FW活動では、学年ごとにテーマを設定し、ステップアップしながら探究学習に取り組んでいく。今回は4年生(中高一貫での学年。高1に当たる。以下同様)を担当する今門泰久先生に、FW活動の中身とジャパンナレッジSchoolの活用について尋ねた。

2年間の個人研究のテーマはどのように設定するのか?

今門先生:私は「生物」と4年生の「総合的な探究の時間」(以下、総合)を担当しています。本校の総合の核となるFW活動は、1年生の「地域調査」、2年生の「モノ語り(東京のものづくり探究)」、3年生の「科学的検証活動」をグループで行い、4、5年生は「ライフワークプロジェクト(LWP)」と称し、2年かけて個人で仮説検証型の研究活動を行います。4年生でテーマを立てて、その検証作業をし、5年生で4,000字の論文にまとめます。

4年生では、まず12名ほどのゼミに分かれて生徒や教員と議論をしながら、各々「ライフワーク」となるテーマを探っていきます。

今門先生:最初のテーマ設定がいちばん苦労しますね。まずは探究テキストのワークシートに書き出しながら、自分の興味のある言葉を探っていきます。「ワークシート1」では自分がどのようなことに興味があるのか、2年間どんなことに取り組んでいくかを考えます。そのために、図書館や書店を探索しながら知的好奇心がもてる本に当たり、読んで学んだことから疑問文を作ったり、その本から得られるキーワードを挙げたりします。「ワークシート2」ではテーマを決定するにあたって、これまでの自分について振り返り、どのようなことに課題や疑問を抱いてきたのかを確認します。今までどんな本を読んだのか、1~3年生のときにどんなFW活動をしたのか、学校での活動、地域や社会との関わりなど、過去の経験を書き出していきます。「ワークシート3」では、先輩がどのような論文を執筆してきたかを点検し、研究の流れを知ります。先行論文を参考にわからないことや疑問に思ったことを洗い出していきます。そして「ワークシート4」で、自分が興味のある最終的なキーワードを挙げていくのです。

1年~5年まで使用する学校独自の探究テキスト。FW活動に欠かせない
それぞれ書き込みができるワークシート

JKSの「本棚」が生徒たちの興味・関心の幅を広げる

今門先生:テーマ設定前の「本に当たる」というところで、ジャパンナレッジSchool(以下、JKS)の「新書・文庫」での読書を推奨しています。いわばFW活動の種まきの段階ですね。特に「ブルーバックス」、「岩波ジュニア新書」、「岩波ブックレット」をすすめています。1人1冊、自分の興味のある本を読んでくださいと言っています。

そもそも図書館に行くのがおっくうな生徒もいるし、図書館に行く生徒も自分の興味のある棚だけを見がちです。JKSの「新書・文庫」の「本棚」は、わりと分野が混在して配置されているので、ふだん意識していなかったキーワードの発見につながります。生徒たちの興味・関心を広げるきっかけになると思います。

JKSの「新書・文庫」「社会学」ジャンルのトップページ

今門先生:次に、「ワークシート4」で挙げたキーワードの中から調べたいテーマを決める段階に進みます。まずは、そのテーマで調べ学習をしてもらい、さらなる疑問を作ります。そして、再びその疑問について調べ学習をする。それを何度も繰り返して、すぐには答えが出てこないような問いを発見できたら、それが「ライフワークプロジェクト」のテーマとなります。つまり、ある程度その分野の知識を深めてから研究を始めます。問いが漠然としていたり、大きすぎたりするのはNG。何をしたらいいのかわからなくなり、単なる調べ学習で終わったりしますからね。

そして仮説を立て検証計画を設定し、検証作業へと入っていきます。生徒たちは、選んだテーマが理系分野なら実験やシミュレーションを行ったり、社会学分野なら調査取材に行ったり、また、歴史系や文学系分野なら、資料を集めてデータを起こしたりしています。

1年目の締めとなる4年生の3月に、「ポスター発表」を全員でやってもらいます。この段階では、まだ結論に達していない生徒も多いので、いわば「中間発表」です。全校生徒が参加するので、これから「ライフワークプロジェクト」に取り組む下級生たちにとっては、大いに参考になるそうです。

ポスターセッション。教員も一聴衆として参加

今門先生:4年生のFW活動の担当教員は私を入れて13人。私は教科では生物を担当していますが、受け持つゼミでは、全員が生物を研究テーマにするわけではありません。だから、助言するというよりは、一緒に研究をするというスタンスで生徒たちに接しています。生徒の研究を知って、私も知識を増やしていく。毎年同じことをやるわけではないので、いろんなことを生徒の研究から知ることができて面白いです。飽きないですね。

FW活動は生徒にどのような変化をもたらすのか?

今門先生:5年生は最終目標の論文作成に取り組みます。4年生で積み上げてきたものを学術論文にまとめるという作業です。まずは、夏休みに2,000字の論文を書きます。そして冬休み前に4,000字の完成論文を提出してもらいます。きちんと検証し、書く材料のある生徒は文字数が足りないと言いますね。書けないで苦しんでいる生徒は、仮説検証型の研究をするにあたってきちんと下調べができていなかったり、検証結果などの材料が集められていなかったりしたことが響いているのだと思います。

FW活動を担当して5年になりますが、活動の骨格は変わりません。ただ、質を少しでも上げられるように、テキストを作成したり、テーマを考えるときのワークシートを改良したりしました。また、先輩たちの論文は図書館で閲覧できるようになっていて、昨年度から蔵書検索システムから論文タイトルを検索できるようにしました。先輩たちの論文は研究者などが書いたものに比べて読みやすい。それに、うまくいかなかったケースもあるので、そこから学ぶことも多いです。生徒には、似たような研究をするときには、先輩が書いたものを前提にしてくださいと言っています。

代表的な論文は「南多摩論文集」としても所蔵。すべての先輩たちの論文をいつでも手に取って読むことができる

今門先生:FW活動の成果としては、1、2年生は企業などに訪問して調査したりするので、大学の先生や企業の人にアプローチするなど、主体的に情報を取りに行くことができる生徒が増えました。また4、5年生では、調べ学習と探究・研究の違いがつかめるようになります。特に、5年生の論文作成は卒業生たちには好評で、「書いているときはつらかったけど、やってよかった」、「大学ではとても役に立っている」と、よく言われます。

研究が進んでくると言葉を調べることが少なくなりますが、今後は、言葉を選ぶとか、文章を洗練させるところまでできるといいなと思います。そのときには、さらにJKSの活用が進むとよいですね。

(2024-3-30)
生物と4年生の総合を担当している今門先生

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