「歴史総合」の単元の1つである「近代化と私たち」の授業においてジャパンナレッジSchool(以下、JKS)を活用。
「近代化」の概念について理解するために「近代」や「近代化」について調べ、検索語の関連項目、参考文献から内容の理解を深める発展的な学習を展開。また、生徒自身が主体的に行なう授業では辞書や書籍のコンテンツも最大限利用した。
活用事例
言葉から言葉へ……
発展的に調べることで
理解を深めていく
京都産業大学附属高等学校
私立・共学/学年:高1/JKS導入:2021年/利用端末:ノートPC
どのコンテンツの「近代化」が授業内容に合っているのか?
「近代」で調べると、「日本国語大辞典」などでは「現代に近い時代」とある。すると「現代」とはどんな時代なのかとなっていき、言葉の意味を追いかけて、理解が深まっていく。
「国史大辞典」はさまざまなカテゴリーごとに分かれて、詳述されている。
中尾先生:「国史大辞典」の「近代」は「海運」や「外国貿易」「家族制度」といった種別に記述されていて、高校1年生には少し難しい気がしました。「日本大百科全書(ニッポニカ)」の「近代化」がわかりやすくまとまっていたので、今回はこちらを主に取り上げました。
読んでいくと「近代化」の概念が多様であることがわかります。また「歴史的近代化と普遍的近代化」の箇所は、近代化について考える授業の導入として、うまく活用できました。
「日本大百科全書」の「近代化」の項。
「歴史的近代化と普遍的近代化」「近代化論の系譜と性格」「近代化(論)の限界と脱近代への動き」といった見出しが立てられている。
授業で配布されたプリント。右の問いのプリントに対し、生徒たちはJKSを活用して書き込んでいく。
「関連項目」「参考文献」で「近代化」への理解がさらに深まる
中尾先生:検索語の「関連項目」「参考文献」「前後項目」からもさまざまな発見ができます。たとえば「ニッポニカ」の「近代化」の「関連項目」の中には、アメリカの社会学者「ウォーラーステイン」の名前があり、「ウォーラーステイン」について調べると、「低開発国が先進諸国と同様の軌跡をたどって発展するという「発展段階説」では説明できない」という記述があります。どの国やどの民族も同じ段階をたどるのではなく、近代以降の世界全体を単一のシステムと捉えて、ある国が工業化したために、ある国は工業化できなくなったということを理解することで、そこに内包する諸課題を探究する授業へとつなげていくことができます。
また、「ウォーラーステイン」の箇所の「参考文献」を見ると「川北稔」という名前が出てきます。川北氏は、『砂糖の歴史』(岩波ジュニア新書)で砂糖を通して世界システム論の考えに基づいた近代史の流れについて平易な文章で記しています。この本はJKSの「新書・文庫」の中に収められているので、生徒たちに読書をすすめました。
「日本大百科全書」の関連項目。ここを見るだけで「近代化」のイメージが広がる。
アメリカの社会学者「ウォーラーステイン」の名前も関連項目にあがっている。
「ウォーラーステイン」の参考文献。川北稔氏の訳の本が並ぶ。
川北稔氏の『砂糖の歴史』(岩波ジュニア新書)はJKSの「新書・文庫」のラインナップに入っている。
JKSの幅広いコンテンツを主体的・対話的授業に活かしたい
中尾先生:近代の概念について確認したあとで、市民革命、産業革命、国民国家の形成、帝国主義の時代について授業を展開しました。帝国主義の時代については、生徒が教科書に沿ったテーマでJKS等を活用して調べ、グループで発表する形で授業を行ないました。
生徒たちは、担当するテーマについて関係する言葉をJKSで調べ、Google Classroomで共有。
「産業革命」や「大逆事件」などについて調べている。
JKS「本棚:学習まんが」の中に入っている「日本の歴史」を用いて授業の準備をしているグループもあった。
中尾先生:「社会的事象の歴史的な見方や考え方」を育むために、次年度の歴史の授業では、JKSで見ることができる「日本国勢図会」や「現代用語の基礎知識」なども活用したいと思っています。
たとえば、「歴史総合」の最初の単元では、「日常生活や身近な地域などに見られる諸事象が時間的な推移や空間的な結びつきの中で歴史とつながっていることを理解する」ことが求められており、現代社会の課題についてこれらに掲載されている資料や文章が有効活用できると考えているからです。
JKSの場合、ある言葉を調べることをきっかけに、他の項目、そして他のコンテンツへとつなげることができます。こうした授業の実践を通して、主体的・対話的で深い学びにJKSが十分活かせるのではないかと思っています。
*Google Classroom
Googleが提供する教育現場向けに構築されたプラットフォーム。クラス単位で生徒や学習内容を運営・管理することが可能。先生は課題の作成・管理、フィードバックの提供などを、また生徒は課題の提出やリソースの共有などを、紙を使わずにオンライン上で行なうことができる。Gmail、Google ドキュメント、Google カレンダーなどのさまざまなツールとともに利用できる。
* ウォーラーステイン[1930―2019]
アメリカの社会学者。ニューヨーク生まれ。1947年コロンビア大学入学、1951年修士号を取得。1958年から1971年まで同校の教壇に立ち、1959年に博士号を得ている。1973年に米国アフリカ学会の会長に就任。1971年からカナダ、モントリオールのマギル大学に所属した後、1976年よりニューヨーク州立大学ビンガムトン校フェルナン・ブローデル・センター所長。1994~1999年国際社会学会会長。1999年からはエール大学シニア・リサーチ・サイエンティスト。(JKS「日本大百科全書(ニッポニカ)」)
*『砂糖の世界史』(川北稔著)
茶や綿織物とならぶ「世界商品」砂糖.この,甘くて白くて誰もが好むひとつのモノにスポットをあて,近代以降の世界史の流れをダイナミックに描く.大航海時代,植民地,プランテーション,奴隷制度,三角貿易,産業革命―教科書に出てくる用語が相互につながって,いきいきと動き出すかのよう.世界史Aを学ぶ人は必読!(JKS「砂糖の世界史」書誌情報)
関連情報
京都産業大学附属中学校・高等学校の、JKS導入の背景や取り組みの成果は導入事例でも紹介しています。ぜひご覧ください。
言葉を調べるだけでなくその先にある学びに期待(京都産業大学附属中学校・高等学校)
中尾先生:2022年度から実施されている高等学校の学習指導要領で地歴科の必修科目となった「歴史総合」を高校1年生に教えています。「歴史総合」は、近現代史について、世界史、日本史を融合的に併せて扱う新科目です。「近代化」「大衆化」「グローバル化」をテーマに、現在における私たちの生活とのつながりを意識して学びます。その「近代化と私たち」の授業でJKSを活用しました。